REPORTピックアップレポート

【小山市】当日取材、NEO TRADが紡ぐ未来——結城紬にかける本気のプロジェクト

2025.06.01



先月に事前にインタビュー取材させてもらったNEO TRAD、本番を観に小山ロブレ6階の会場まで行ってきました!
伝統って堅苦しい?と思っていた人にこそ見てほしかった、ちょっと不思議で、でも妙に心に残るステージが次々に繰り広げられました。



小山ロブレ6階会場前には看板が準備されていました。
少し前に入って見学していいということで早速行ってきました。

NEO TRAD、開演前からすでに見どころだらけ。



ヘアメイクアーティストのJUNさんが学生たちにを集め本番の打合せをしていました。
打合せ中の学生たちの表情には緊張と期待が入り混じり、会場は静かな高揚感に包まれていました。



本番前、ふっと場がゆるむように始まった雑談。でもそのやりとりからは、緊張とワクワクがにじみ出てました。
そんな中、JUNさんと小山市地域おこし協力隊の横山賢さん、通称「横山ブラザーズ」の会話がスタート。
今回は結城紬にスポットを当てた理由や、NEO TRADへの想いなどをざっくばらんに語っていました。
そのあたりの詳しい話は、ぜひ過去のインタビュー記事をチェックしてみてくださいね!



そのあとJUNさんは、緊張気味の学生たちを1人ずつ名前で呼び、順番にステージへ。
やさしい声かけと笑顔で、少しずつ緊張をほぐしていく姿が印象的でした。

登壇したのは、みんな高校3年生。
受験や進路など、不安やプレッシャーの多い時期にもかかわらず、このイベントに真剣に向き合っていることに、ただただ「すごいな」と思わされました。
そして何より、みんながそれぞれに“夢”を持っていることにも胸を打たれました。



会場に続々と観客が集まる中、今回のメインアーティスト・ペインターのSAYAさんと、プロデューサーのJUNさんによるトークがスタートしました。

まずはイベントタイトルについての話から。
会場に飾られていたSAYAさんのイラスト「ダイスキ」(ページ上部に掲載された作品)が、今回の世界観を形づくるきっかけになったそうです。
JUNさんは「このイラストの雰囲気はヘアメイクのビジュアルにも落とし込みやすい」と感じて、世界観づくりに使わせてほしいとお願いしたと話していました。

 

SAYAさんが「ダイスキ」に込めた想い

「“ダイスキ”というタイトルは、描いている途中で思いついたわけではないんです」
そう語るSAYAさんは、描く順番や構成も気にせず、心から“好き”と思うものを集めて描いた結果、この名前になったそうです。
好きなものを詰め込んだから「ダイスキ」。シンプルだけど、それだけで伝わるパワーがありますよね。
 

第一部:今の“マリー・アントワネット”を結城紬で表現

今回のステージは2部構成。
第一部では、結城紬のバックボーンを「マリー・アントワネット」に重ね、舞踏会へ向かうときのような華やかなヘアメイクや衣装で構成されました。
JUNさんは「今の時代に伝えるなら、今っぽくなければ響かない」と考え、現代版マリー・アントワネットのアイコンとして、アーティストのちゃんみなをイメージしたそうです。
“ちゃんみなっぽさ”を表現するモデルを中心に、新しい世代に向けた結城紬の見せ方を提案していました。



 

第二部:アリスのような、不思議な物語の世界へ

第2部のテーマは、JUNさんが子どものころに何度も見たという『不思議の国のアリス』のような世界。
「よくわからないけど、気づけば最後まで見てしまう」
——そんな、夢の中みたいな物語を舞台にしたかったと語ります。

テーマに悩んでいたJUNさんを助けたのが、SAYAさんの一言でした。
展示されていたスフィンクスの猫の絵を見て、SAYAさんが「この猫がチェシャ猫で、場を牛耳ってるって設定にしたら面白くない?」とひと言。
そのアイデアから物語が広がり、“チェシャ猫”が登場する幻想的なストーリーが完成したそうです。
 

2つの王の物語を、ダンスで表現

第一部の“マリー・アントワネット=女王様”と、第2部の“チェシャ猫=王様”。
この2つのシーンには、どちらも“王”の存在が描かれています。
そんな重層的な世界観を、今をときめくダンサーたちが身体で表現する——そんなステージ構成になっていました。



その後は、このイベントを支えるスタッフの紹介タイム。
音響を準備してくれた方や、ネイルの準備をしてくれた方など、舞台の裏で力を尽くしてくれている人たちを、ひとりひとり丁寧に紹介していました。
一緒につくっているんだという“チーム”の雰囲気が感じられる、あたたかい時間でした。

物語のはじまり。結城紬が新しい姿で息を吹き返す

第一部開幕




ステージには、まるでマリー・アントワネットの世界に迷い込んだような光景が広がっていました。
お菓子をほおばりながらヘアメイクをしてもらうダンサー。
その隣では、ペインターのSAYAさんが筆を走らせ、JUNさんたちヘアメイクチームが手際よく仕上げていきます。
甘く、少し毒のある“夢のような”シーンが、少しずつかたちになっていく——その様子自体が、ひとつのパフォーマンスのようでした。



ステージ上では、その場でどんどん髪型も絵も変わっていきます。
今ここでしか見られないヘアメイクとペイントが、目の前でどんどん形になっていきました。



ヘアメイクを終えた“マリーアントワネット”が、ついにダンスを披露。
クラブで踊るような、現代的でパワフルなダンスを、結城紬をまとって表現する姿に思わず目を奪われます。

赤と黒を基調にした、毒々しささえ感じるほどインパクトのある衣装。
そこに、従来の“地味”な結城紬のイメージは一切なく、あるのはただただ“今っぽさ”。
「結城紬って、ここまで表現できるんだ」——そんな可能性を、強く感じる瞬間でした。

ダンスも圧巻。
まさに“強い女王”のようなエネルギーが、全身から放たれていました。
 

第二部開幕



第二部の幕開けは、まるで物語の世界に足を踏み入れたかのような瞬間。
そこに立っていたのは、“迷い込んできたアリス”。
不思議の国の始まりを告げるように、静かに、でも確かに物語が動き出しました。



ステージ上では、アリスがダンスをしながら、同時にヘアメイクを受けるという斬新な演出が繰り広げられました。
軽やかに踊るアリスの髪が、プロの手によって少しずつ整えられていく様子は、まるで夢の中のワンシーンのよう。
動きのある中でも、美しく仕上がっていく過程に、客席からは感嘆と驚きの声が漏れていました。
「踊りながらメイクが完成するなんて、本当に不思議の国みたい」——そんな声も聞こえてきそうでした。



そして次の瞬間、ステージ上で“ライブ着付け”が始まりました。
アリスの衣装を見て、「あれ? 結城紬じゃない?」と思っていた観客も、この展開には思わず息をのみます。
なんとその場で衣装替えが行われ、結城紬をまとっていくのです。

着付けを担当したのは、結城紬のkimono dresserお二人。
静かな緊張感が漂う中、彼らの確かな手つきで、美しい結城紬が一枚ずつ丁寧に重ねられていきます。
ステージの光を受けて、布の風合いや柄が浮かび上がるたびに、観客の視線は釘づけに。



着付けが進む中、ステージのもう一方では、ライブペイントが静かにクライマックスを迎えていました。
筆を走らせる音と、織士たちの布を整える手の動きが、まるでひとつのパフォーマンスのように呼応します。

やがて、最後の一筆がキャンバスに刻まれ、ライブペイントが完成。



着付けが完成し、結城紬を身にまとったアリスが激しく舞い始めます。
しなやかに揺れる紬の布が、動くたびに光を受け、柔らかな艶を放っていました。

その隣に現れたのは、男性ダンサーと美容師のJUNさん。
なんとJUNさんは、ステージ上でその場の空気を感じながら、ダンサーの髪をハサミで切り始めたのです。



即興で仕上がっていくヘアスタイル。
切るたびに形を変えていく髪と、紬をまとって舞うアリスの姿が並び立つその光景は、異なる表現が交差する“生のアート”そのものでした。

そして、男性ダンサーの衣装は——まだ明かされていません。
観客の視線が、次に訪れる“変化”をじっと見つめていました。



ヘアメイクが仕上がると、ついにその全貌が現れました。
男性ダンサーがまとっていたのは、なんとチェシャ猫柄の結城紬。
紫のストライプが施されたその一着は、遊び心と気品を兼ね備え、観客の目を一瞬で奪います。



そして、舞台中央で踊り始めたのは、まさにそのチェシャ猫。
しなやかな動きで舞いながら、結城紬の柄と光が織りなす独特の存在感を放ちます。
一つひとつの動きが、まるで物語の続きを語っているかのよう。

こうしてNEO TRAD第二部は、チェシャ猫のダンスとともに、静かに、そして鮮やかな余韻を残してクライマックスを迎えました。

NEO TRADを“生きた”人たちの声



ステージの余韻が残る中、実際にライブ着付けを担当した結城紬のkimono dresserさんたちがマイクを握りました。

「1500年続いてきた結城紬ですが、その歴史が今、途切れかけています。
今日のショーを通じて、少しでも心に“ともしび”が灯ったなら嬉しいです。
これからの時代を生きる子どもたちの未来に、結城紬をつないでいくことが、私たち大人の役割だと思っています。」

そう語ったのは、結城紬の織士であり市の職員でもある今泉さん。
10年以上にわたって結城紬の生産に携わり、次世代へ伝統をつなぐ役割を担っています。

「私たちは、これからも結城紬の火を絶やさぬよう活動を続けていきます。
どうか、これからも結城紬を見守ってください。」

その真摯な言葉に、客席からは温かな拍手が送られました。



ちなみに、ステージでヘアカットパフォーマンスを披露したJUNさんの着物も、もちろん結城紬。
この着物を制作したのは、紬織士のHiroさんです。

完成までには約2〜3カ月を要し、実はこの一着がHiroさんにとって“第一号”となる作品だそう。
思いのこもった一反が、JUNさんの動きに合わせて柔らかく揺れる様子は、まさに職人と表現者のコラボレーションでした。

そしてこのあと、Hiroさんによる「地機(じばた)織り」の実演も予定されています。
1500年続く技を、その目で、耳で、間近に体感できる貴重な機会が、ショーの余韻をさらに深めてくれます。



3人のダンサーたちは、それぞれの結城紬が一番美しく見える動きを考え抜き、この日のために振付を作り上げてくれました。
結城紬の質感や揺れ、光の反射までを計算したそのダンスは、ただのパフォーマンスではなく、紬そのものの魅力を引き出す“舞台芸術”そのもの。



3人が結城紬をまとって舞う姿は、まさに「伝統」と「表現」が美しく重なり合った、息を呑むような瞬間でした。



そして、見事なライブペイントを披露したアーティストのSAYAさんから、最後に嬉しいお知らせがありました。
6月7日から、SAYAさんにとって初となる個展がスタートするそうです。
会場は「Aircraft Carrier」。今回のステージで感性を魅せてくれたSAYAさんの世界観を、より深く味わえる貴重な機会です。

「本日はありがとうございました」
そう語り終えると、会場からは大きな拍手が送られ、NEO TRADの一夜は温かく締めくくられました。





 

見て、触れて、感じる結城紬

展示スペース







 

結城紬のワークショップ







 

「地機(じばた)織り」の実演



実演スペースでは、結城紬の伝統技法である「地機(じばた)織り」が披露されていました。
足で織り機を支え、自身の体重をかけながら糸を一本ずつ通していくその作業は、見た目以上に繊細で力強いもの。
機械には頼らず、人の手と感覚だけで進められるその技法は、まさに“身体と布が対話する”ような織りの世界でした。



織り手が発する「トントン」という音が空間に響くたび、結城紬の1500年の歴史が静かに息づいているように感じられます。
その姿を見つめる来場者たちは、皆言葉を発することなく、ただ目の前の技に見入っていました。
 

SAYAさんにとって初となる個展



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この記事を書いた人

ふらっとろーかる 事務局

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