2度の大雨によって甚大な浸水被害が発生した巴波川。
洪水対策として進められていた「地下捷水路」建設プロジェクトも佳境に入り、掘削を進めていたシールドマシンが遂に終点へと到達しました。
災害に強い街として生まれ変わりつつある栃木市の「今」を、最新の現場写真と栃木市の皆さんへのインタビューと共にお届けします。
遂にシールドマシンが終点まで貫通
10月23日、トンネル掘削工事完了の報告会が開催されました。
ついに約2.4kmの長いトンネルが貫通したんだって!
終点は栃木市大町。
18か月に渡る長期間の工事でしたが、道路や河川に影響を与えることなく、無事に掘削を終えることができたそうです。
迫力のシールドマシンを間近で
全長約6m・総重量約30トンのシールドマシン。
先端には、掘り進めるためのシールドカッターヘッドが装着されています。
施工前は、写真のようにカラフルな色が付いていました。
しかし、土砂や地下水の中を掘り進めるうちに色が剥がれていきました。
この色が付いていたブロックのような物は「ビット」と呼ばれる部品です。
一度掘り始めてしまうとビットを取り替えることができないので、あらかじめ高さや大きさを設計したそうです。
実際に間近で見てみると大きく削れたり凹んだりしている部分が多く、
過酷な環境の中を掘り進んできたことが、その痕跡からひしひしと伝わってきました。
シールドマシンの穴から反対側を覗いてみると、機械設備などの撤去作業の真っ最中でした。
今後はこのシールドマシンをクレーンで持ち上げ、撤去作業を進めていくそうです。
栃木土木事務所 須田様にインタビュー
【今回の工事において大変だったことは何ですか。】
新栃木駅付近の90度に曲がるカーブを削掘する際は、最大限慎重に施工しました。
今回、セグメントというコンクリートブロックをつなぎながらトンネルを掘り進めていたのですが、
通常1.2メートル幅のセグメントを使うところ、その急カーブには30センチしかないブロックを細かく重ねることで、無事施工を完了することができました。
【今後の工事はどのように進められますか。】
今回のトンネル工事が終わっても洪水を流入・流出させる施設をこれから作ってまいります。
安全に、効率的に進めることを意識し、適宜調整しながら施工してまいります。
【長きにわたる工事でしたが、今の率直な所感をお聞かせください。】
なんといっても「安心した」という気持ちが大きいです。
これから危険性の高い工事が続きますが、まずはトンネルを掘り終えられたというのは一つの大きな区切りになるのではないか、と考えています。
【地元の方へのメッセージをお願いします。】
まだまだ工事は続きます。我々も安全第一で仕事をしてまいりますが、今しばらく完成をお待ちいただければと思います。
お問い合わせ等は、栃木土木事務所の方によろしくお願いいたします。
栃木グランドホテル 代表取締役 社長にインタビュー
続いて、栃木グランドホテル代表取締役 社長 若林章倫さんのインタビューをお届け。
経営者として、そして栃木市の観光を長く支えてきた立場から、今回の工事への思いをお話していただきました。

▲栃木グランドホテル代表取締役 社長 若林章倫さん
【当時、どのような浸水被害を受けましたか。】
2回目の水害では、大通りが川のようになり、ホテルのフロアまで水が入ってきてしまいました。
水の量は1回目ほどではなかったのですが、泥水が結構ひどかったです。
駐車場も全部泥水で埋まってしまって、それもちょっと大変でしたね。
水害に備えているつもりでも、「まさか」という思いがあったので、「もう勘弁してほしい」というのが本音でした。
【県の事業として始まった今回の工事をどのように受けとめていらっしゃいますか。】
あれだけ大きな工事になると、市区町村だけでは中々できない工事ですよね。
大きい水路ができるのは本当にありがたいですし、画期的だと思います。
もともと水が流れやすい所に町が栄えているので、水を逃がしてくれるというのはありがたいの一言に尽きます。
【蔵の街並みを維持しながら防災対策をする、という観点についてどのようにお考えでしょうか。】
栃木市は地下水が豊富で、少し掘るだけで地下水が出てしまうため、地下を有効活用した建設はしにくいと土木関係者の方が言っていたのですが、
そういう地下を今回のように水路にしてくださるのはとても画期的だと思います。
【栃木市にとって前例のない今回の工事について、どのように捉えていらっしゃいましたか。】
大きな水害が何度も起こるようになってしまうと、商売にも差し障りが出ます。
早く完成して、「多少の大雨が来ても大丈夫」という環境を整えてもらった方が経営的にもプラスになると捉えていました。
我々が不安な環境はお客様にとっても不安な環境なので、私たちが安心して事業が展開できる環境を整えてもらえて初めてお客様にも安心してサービス提供できるので、とにかく1日も早く完成してほしい、というのが本音でした。
【災害に強い街として生まれ変わりつつある今、ホテルを訪れるお客様にはどのように過ごしてほしいですか。】
宿泊されるお客様にとって、圧倒的にリラックスして「ゆっくり休みたい」というのが一番の想いだと思います。
「家族連れの方も安心して泊まれる」と言っていただけることが多いので、そういう想いで泊まっていただきたいです。
また、災害の注意報や警報が出ると「自宅にいるのが心配でホテルに泊まりたい」というお客様も実際にいらっしゃるのですが、
そういった意味でも「安心して泊まれるホテル」と思っていただけたらありがたいです。
自治会長さまにインタビュー
2度の浸水被害を経験された、万町の自治会長さまお二人にもお話をうかがいました。

▲万町一丁目の自治会長さま
【実際に工事現場をご覧になっていかがでしたか。】
これだけ大きな捷水路ができたということは、栃木市民にとっては1つの大きな安心材料になるのではないかと思いました。
工事中も事故などは一切なかったそうですし、今の技術の素晴らしさというものを再確認いたしました。
【ご自身も2度の浸水被害をご経験されたそうですね。】
私だけでなく家族も水害を経験しました。
1度目の浸水は約60センチの車止めがほとんど見えなくなるくらいの水が大通りを流れましたし、
2度目の浸水はまだ建てて間もない娘の家で、家電まで全て浸かってしまう被害に見舞われました。
今回、こうした大きなプロジェクトが無事に終わりそうだと聞き、とてもありがたいなと思っております。

▲万町三丁目の自治会長さま
【実際に工事現場をご覧になっていかがでしたか。】
当時、私の町内では5軒の床上浸水の被害を受け、私自身も床下浸水を経験しています。
実際に工事現場を見て、床上浸水だけでなく床下浸水も無くなるのではないかと期待しています。
ただ、今回の工事についてより多くの市民の皆様に周知していただく必要があると感じています。
【栃木の歴史と文化を守るという観点から、今回の工事にはどのような意味合いがあると思いますか。】
浸水すると、栃木の文化の一つである古い建物が壊れてしまいますよね。
栃木の文化を守るためにも、捷水路や地下水をどう対策するのか考えることは大切だと思います。
そしてこれからは、間違いなく「安心になった」ということを皆さんに周知徹底してもらう。
そういう事も大切だと思います。
まとめ
シールドマシンによる掘削工事が完了し、「地下捷水路」建設プロジェクトは大きな節目を迎えました。
これまで2度の大きな水害に見舞われた栃木市は、確実に「災害に強い街」として生まれ変わろうとしています。
長い年月をかけて進められてきたこの事業が地域の安全と安心を支え、市民の皆さんが穏やかに暮らせる未来へと繋がっていくことを願ってやみません。
前回の記事はこちら!
おまけ
ちなみに、150cmの事務局スタッフがシールドマシンの中に入ってみるとこんな感じでした。